空き家の売却中に空き巣に入られた話

タイトルから少し物騒な話しですが、かれこれ7年~8年前に鎌倉の住宅街で、ある空き家の売却を任せて頂いていたときの話しとなります。

売主様はご高齢の女性でもう住むこともないので売却したいとの意向でした。但し、その住宅街は流通性がその時点では弱く、なかなか良い買手を見つけることができないまま時間が過ぎていきました。(現在その住宅街はコロナ禍から相場が上がり、流通性も強くなっています)

大体半年ほど経過したぐらいでした。物件の定期的な状況確認に現地に行き、まずは庭回りからと庭に向かうとガラス片が落ちていました。

なんだろうと手に取り眺めながら、パッと窓を見ると窓の一部が割られており、室内に土足で入ったあとがありました。これは空き巣が入ったなということで、急ぎ売主様に連絡し、現地に来てもらいました。(幸い物件の中は何も無い状態だったので取れる物も無かったと思います)

売主様より警察に連絡をしてもらい、すぐに警察が来て実況見分が始まりました。そして指紋採集をしていくのですが、指紋がガラス片より出ましたと警察の方が言っていたので、「それ多分私の指紋です、さっき触ったので」と言うと私の両手の全指の指紋を取られました。(一応、記録には残さないとおっしゃっていましたが・・・)

少し脱線しましたが、かれこれ3時間~4時間ほど実況見分をしていたと思います。

その中で私の印象に一番残っているのは売主様の悲しそうな表情です。若いころに現在は亡くなってしまったご主人様と3人のお子様をこの家で育てた記憶が壊されたもしくは汚された、そのような表情をされていました。

空き巣が入ったことで物件の瑕疵になってしまう。ただこれは何とかして売り切らないといけないと強く思ったのもこの時でした。

その後1ヶ月が過ぎたあたりで、売却活動の中で中古住宅リフォームを手掛ける会社から購入検討者が紹介され、建物をリフォームしてそのまま使いたい、空き巣が入ったことも気にしないという条件でしたので、売主様に報告したところ、非常に喜ばれ、契約に至りました。

古い建物だったので、壊されるだろうとなと思っていた売主様からすると、建物をそのまま使ってくれる買主様は思い出を引き継いでくれるような感じがしたとのことでした。その後、無事に引渡しも終わり、取引が完了しました。

私がこの取引で得た教訓は、売主様が長く住んだ家は必ず思い出があるということです。その思い出の最後である売却を嫌な思い出にしないことが不動産に携わる者の義務であると感じた取引でした。

ちなみに空き巣は結局捕まりませんでした。空き家の放置は問題になっていますが、そこに空き巣が入られると何も取られなくても、思い出が汚されたような何とも嫌な気持ちになると思います。また売却時の資産価値も下がってしまいます。

空き家は放置をせず可能な限り早く、売る、貸す、管理を依頼するなどの手を打つことをお勧め致します。