不動産売却を何度も経験している方は少なく、ほとんどの方は人生で一度経験するかどうかだと思います。こちらでは不動産売却の方法から発生する費用、売却が難しい状況などをご説明させて頂ております。皆様の不動産のご売却が少しでも良いものになれば幸いです。

不動産の売却方法

ご希望される価格・条件にて買主様が見つかるまで売却活動を行う売却方法です。不動産会社と媒介契約(売却を依頼する契約)を結び、売却活動を任せます。その不動産会社で売却活動は様々ですが、九眞エステートではレインズ(不動産会社間流通サイト)、SUUMO、チラシ広告、Youtube動画などで広く買手を募ります。相場から乖離がなければ大体3ヶ月程でご契約に至ることが多いです。メリットとしてはご希望の金額で売却できる可能性があること。デメリットは購入者が現れるまでの期間が読めないことです。

弊社を含めて不動産会社にて不動産の買取をしてもらう売却方法です。不動産会社が各種調査の上、ご所有の不動産に対し買取価格を提示致します。大体1週間ほどで価格・条件が提示されますので、ご依頼されてからすぐにご契約まで進みます。お引渡しまでマンションであれば1ヶ月、土地建物であれば測量が発生する可能性がありますので3ヶ月程です。メリットとしては早期に確実に売却ができること、室内の残置物や汚損、破損を気にしなくてよいこと、引渡し後の契約不適合責任(注1)を売主様が負わなくてよいこと。デメリットとしては不動産会社の買取価格がご希望の価格に届くかわからないということです。

※注 契約不適合責任とは不動産の引渡し後、不動産の瑕疵があった場合に売主様が買主様に対し負う責任です。地中埋設物、建物の雨漏り、シロアリ、給排水管の故障などが主なものです。

不動産売却の諸経費

不動産の売却時には、売却した不動産の代金が入りますが、売主様が支払う費用もございます。各諸経費につき以下にご説明させて頂きます。

不動産会社に支払う手数料です。弊社では全ての取引が完了し、売買代金が売主様に支払われたときに成功報酬として頂戴致します。不動産成約価格×3%+6万円×消費税が手数料の計算式となります。また800万円以下の不動産については令和6年7月1日施行の低廉な空家等の媒介の特例により報酬額は30万円×消費税が上限となっています。

売買契約書に貼付する収入印紙代です。消印することで納税が完了します。売買金額が大きくなればなるほど納税額が増えます。平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される不動産の譲渡に関する契約書の印紙税率は軽減が適用されています。

住宅ローンなどの抵当権を抹消した場合に発生する費用です。売買の所有権移転を行う司法書士に依頼した場合の相場は一般的に3万円ほどです。

土地や土地建物を売却する際に、お引渡しの条件になることがあります。土地家屋調査士に依頼し、隣地との立ち合いや境界標の設置、境界確認書の締結などをお引渡しまでに完了してもらいます。一般的な相場として50万円~60万円、大規模な土地や隣地所有者の数が多い場合は100万円を超えることもあります。

お引渡しの条件として、買主様が解体を希望された場合に発生する費用です。引渡しまでに解体業者にて建物を解体してもらいます。一般的な相場として100㎡程の木造住宅の場合200万円~300万円がかかります。

建物を解体後、残っている建物登記を滅失する費用です。土地家屋調査士に依頼し、引渡しまでに建物登記を滅失してもらいます。一般的な相場としては3万円~5万円ほどです。

室内に残されている動産を撤去する費用です。こちらも買主様より要望されることがあります。撤去業者に依頼し、引渡しまでに完了してもらいます。一般的な相場として30万円~50万円ほどです。

室内状況によっては、リフォームをした方が良い場合があります。一般的にクロス張替や畳交換、クリーニング等の化粧直しは100万円程、水回りの交換も含めると300万円~400万円程かかります。

不動産の売却で利益が出た場合に発生する費用です。不動産の所有年数が5年を超える場合は長期譲渡所得20%(所得税15% 住民税5%)、不動産の所有年数が5年以内の場合は短期譲渡所得39%(所得税30% 住民税9%)の税率が利益に対してかかります。売却した翌年の確定申告で申告し、所得税の納税、6月頃に住民税の納税をします。また2037年までは所得税に2.1%の復興特別譲渡税もかかります。但し、自己居住用の不動産は3000万円の特別控除が使えるので、売却時の利益が3000万円以内なら譲渡所得税はかかりません。(特例の申告は必要となります)

令和6年4月1日より相続登記が義務化されましたが、不動産の売却時には相続登記がされていることが必須条件となります。ご契約時は遺産分割協議書が整っていれば売買契約をすることは可能ですが、お引渡し時までに相続登記を完了させなければなりません。ご自身でされる場合と司法書士に任せる場合がありますが、司法書士に任せた場合は、不動産の評価額にもよりますが、一般的に10万円~20万円程です。

不動産の売却が難しくなる状況

不動産の売却が難しい、または価格が著しく下がる状況があります。以下にケースをご説明させて頂きます。

殺人や自殺などの事件・事故が発生すると著しく価格を下げてしまいます。特殊清掃とお祓いにより場を清めたとしても、価格の値下がりはしてしまいます。事故物件を専門で取り扱っている不動産会社に買取ってもらう方が精神的にも楽になるかと思います。

不動産の所有者が認知症にかかると基本的に売却が難しくなります。司法書士による売却の意思確認が難しくなるためです。また意思の無い方が締結した契約は無効になるので、成年後見制度を使わなくてはならなくなります。但し、弊社ではお困りの方が多い現状を鑑み、認知症の取り扱いに長けた司法書士と連携して可能な限り成年後見制度を使わなくても売却ができるようにご提案させて頂きます。

不動産の売却には共有者全員の賛成が無ければ売却はできません。ご兄弟で相続した場合などで一人が売却に反対した場合は基本的に塩漬けになってしまいます。これが空き家であれば放置せざるを得なくなります。反対されているご兄弟から持分を買い取る、または持分を買ってもらうなどが穏便に終わる方法です。この方法が難しいとなると次は共有持分を不動産会社に売る、共有持分分割請求を裁判所に訴えるなどがあります。

山林や原野など市場性の無い不動産を相続してしまったという方は多くいらっしゃいます。このような不動産は基本的に1円でも買手が見つかればという物件です。放置していると別荘地であれば管理費の発生や山林などは管理面の気苦労があります。このような不動産は売却業務を受けてくれる不動産会社に安値でお願いをするか、相続物件なら国に引き取ってもらう制度もあります。弊社では有償処分を行う会社にて負動産の処分のご提案をすることが可能です。

不動産の売却時に境界確定が条件になるケースは多く、土地家屋調査士が隣地と立ち合い、境界確定を進めていきます。その中で隣地と仲が悪かったり、何かトラブルがある場合は境界を確定できないことがあります。土地家屋調査士や不動産会社が話しても埒が明かない時は境界未確定ということで取引が難しくなったり、売却価格が落ちてしまったりします。このような場合に筆界特定制度を使うか、完全に境界を確定させるには裁判所に境界確定訴訟を訴える必要があります。

前面私道から公道までの道を第三者が所有している場合に、不動産売却において私道の通行・掘削承諾書という書面を取得することが、売買の条件になることがあります。これが取得できない場合、取引が難しくなったり、売却価格が下がってしまいます。ライフラインを引くために道路の掘削をすることは建物の建築にはどうしても必要になるからです。また私道(他人地)なのでライフラインを埋設してもよいなどの法的な定めもありません。(下水道のみ法律の定めがあります)裁判の判決で私道に給排水の設置が認められたこともありますが、基本的には私道所有者と話し合いで難しい場合は民事調停、最終的には訴訟などの方法を取る必要があります。

借地権の譲渡には、地主へ譲渡承諾料を支払うのが一般的になっています。この譲渡承諾料は当初の借地契約書に定められていない場合は、譲渡時に地主と話し合うことになります。一般的には借地権価格の5%~10%を譲渡承諾料とする場合が多いですが、中にはかなり多額の金銭を要求する地主もいます。譲渡承諾料の金額は法律に定めがなく、基本的に地主が強い立場で交渉できるので、このような場合は交渉が決裂することがあります。その場合は裁判所に借地権の譲渡の許可(借地非訟手続き)を求めることになります。但し、借地非訟手続き後、譲渡予定の第三者に先んじて地主が借地上建物と借地権を買取る機会が設けられます。